新人が職場に求めることは何でしょう。
それは、心理的安全性と、手に職を付けるための育成体制ではないでしょうか。
リクルートの「新入社員意識調査2025」では、
Z世代の育成・定着におけるヒントを示唆しています。
それによると、彼らの意識は以下の通りです。
・就職先の会社を選ぶうえで重視していたもののトップは
「働いている人が魅力的・職場の人間関係がよい」(39.4%)。
・働きたい職場のトップは
「お互いに助けあう」(69.4%)。
・上司に期待することのトップは
「相手の意見や考え方に耳を傾けること」 (49.7%)。
・働いていくうえで大切にしたいことのトップは
「社会人としてのルール・マナーを身につけること」(53.6%)。
・ 仕事・職場生活をするうえでの不安のトップは
「仕事についていけるか」(64.8%)。
・仕事をするうえで重視することのトップは
「成長」(35.1%)。
Z世代は、学生時代にコロナ禍を経験し、
リアルでの社会性を十分学べずに社会人になった時代背景があります。
世の中や社会に順応して、安定した生活を維持できるように
成長したいという意識が強いようにお見受けします。
また、Z世代だけでなく、
職場の人間関係が良好なことを期待する声は、
新入社員意識調査を時系列で観測していると、
毎年必ず挙がってきます。
今に始まった話ではありませんが、
良好な人間関係や心理的安全性は、
Z世代も求めていると考えるのが自然です。
そして、昨今はVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)時代といわれています。
企業はもちろん、個人としても、柔軟で迅速な対応能力を培いたいと考えるのは
自然なことと考えられます。
終身雇用が保証されて、それによって幸せな未来が描けるのであれば、
愛社精神を大切にして会社に忠誠を誓うかもしれません。
しかし、終身雇用は過去の遺産になり、
職業選択の自由も存在し、
キャリアアップのために転職することも自然です。
そうであれば、自分の手に職を付けて、
一生困らないようにスキルアップをしようとするのは当然の考えです。
したがって、新人が職場に求めることは、
心理的安全性と、手に職を付けるための育成体制だと考えられます。
では、経営者はどのようにマネジメントしていけばよいのでしょう。
昭和のド根性で「自分でみて、考えて、盗め」というパターンは、
教える側の能力が低いことを自白しているようなものです。
育成という経営課題を、精神論で片付けるのは、“統率の外道”です。
ちなみに、“統率の外道”とは、
大東亜戦争で神風特攻をはじめて採用した大西中将の自分自身に対する言葉です。
未熟な搭乗員が体当たり攻撃するしかなかったのは、
兵站(パイロットの育成等)が間に合わなかったからです。
大西中将は終戦直後に責任をとって割腹自殺されました。
なお、海軍のエースパイロットだった坂井三郎氏によると、
操縦時間が700~800時間で戦闘機操縦法ができ、
1000時間でベテランの域に入り、
このクラスからエースが生まれると語っています。
昭和19年の搭乗員は100時間あるかないかのレベルです。
これではまともに戦えません。
日本が採るべき戦略そのものが間違っていたのです・・・。
戦後80年経った令和の現在、
私たちはビジネスにおける人員の育成において、
再現性高く、スムーズに人材輩出することが求められます。
兵站(いかに人員体制を維持するか)を重視し、
教えられる側の資質等に左右されることなく、
コンスタントに自然に育つのが理想です。
そんな都合の良い育成システムが存在するのかね?
と疑問に思うかもしれません。
もちろん、あります。
分かりやすく、身近な例を挙げますと、
自動車教習所。
どんなに運動神経の鈍い人だったとしても、
再現性高く運転の知識や技能を習得出来ています。
なぜ再現性が高いかというと、
カリキュラムの構成や習熟段階のステップアップの仕方が
よく考えられているからです。
運転免許をお持ちの方ならイメージが湧くかと思いますが、
第1段階から第4段階までカリキュラムがあり、
教える人から合格(見極め)をもらったらステップアップできます。
ステップアップできなければ、
有償で補習を受けなければなりません。
早くステップアップして、仮免許や免許証が欲しいという動機により、
生徒は真剣に学びます。
このように、段階的に反復練習することで、
着実に知識や技能を吸収しています。
もちろん、教える教官は威張り散らすことなく、
褒めちぎるように教える学校が増えています。
このような仕組みは他の世界でも該当します。
例えば、公文式の学習塾は、
〇年生の問題集をマスターしたら、一つ上の年生にステップアップします。
段階的に反復練習することで、
着実に知識を吸収しています。
生徒自身で教材を読み、考え、解き進むことで、
「自分でできた!」「学習が楽しい!」という喜びと、
自ら学ぶ力を育むのが「公文式学習」の本質です。
例えば、和食の料理人は一人前になるのに10年かかると言われました。
板前の修業は、出刃包丁で魚を三枚におろすことを反復練習します。
自分も早く先輩の様に刺身包丁でお客さんの前で
かっこよく切ってみたいと思っても、
師匠の許しが出るまでは出刃包丁で反復練習です。
ちなみに、出刃包丁をしっかりと使いこなせるようになると、
刺身包丁は自然と使えるようになっているものです。
カリキュラムやステップの手順があり、
それを先輩から(昔は)殴られ蹴られて学びました。
最近では言葉による叱咤はあるかもしれませんが、
マニュアルや指導体制が整っているお店では、
短期間で技術を習得しやすくなっています。
また、個人経営の店では、職人が少ないため 、
「早く育てて、即戦力にしたい」 という意識が強く、
早くから実践を積ませてもらえます。
新人に辞められても困りますので、
徒弟制度のような厳しさも和らいでいるようです。
これらのように、カリキュラムを段階的に並べ、
習熟段階のステップアップの見極めが適切であれば、
人は再現性高く成長します。
それではあなたの職場では如何でしょうか。
どんな人材でも再現性高く育つ様に、
カリキュラムを段階的に並べ、
習熟段階のステップアップの見極めを適切に行い、
優しくフィードバックをしつつ、
自発的に階段を上るように啓蒙しているでしょうか。
結局、そこが肝要なのです。
多くの経営者が戦略的な育成を実現したいと考えるでしょう。
であるならば、
忙しさに感けて、育成システムの構築を後回しにしてはいけません。
また、育成システムを構築した後も、
運用が曖昧にならないように、
中間管理職への指導者教育も欠かせません。
(犬の躾でいう“飼主教育”が重要なのと近しいでしょう)
中間管理職が「見て盗め」と言われてきたベテランだった場合、
後輩に優しく手技や知見を伝授することを嫌がり、
PDCAがしっかり回らないこともありえます。
そのような組織は、後輩が育たず、人手不足の弊害を被ってしまい、
結果的に先輩も幸せになれません。
効率よく成果を上げるために準備が必要であるにもかかわらず、
日常業務に追われて準備に時間を割けない状況に陥ることがよくあります。
これは、俗に「木こりのジレンマ」と言われます。
斧を研ぐことで作業効率が上がると分かっていながら、
目の前の作業に追われて研ぐ時間を確保せず、
木こりが鈍った斧で木を切り続ける生産性の低さを揶揄しています。
傍から見たら、「斧を研いだらいいじゃない」と
岡目八目の様にわかるのですが、
当の本人は「分かっちゃいるんだけど、忙しくて・・・」
というループに陥るのです。
あなたの職場では如何でしょうか。
どんな人材でも再現性高く育つ様に、
カリキュラムを段階的に並べ、
習熟段階のステップアップの見極めを適切に行い、
(新人を褒めちぎれとまでは申しませんが)
優しくフィードバックをしつつ、
自発的に階段を上るように啓蒙しているでしょうか。
人員をスムーズに育てるということは、
会社組織の単位で俯瞰すると、
(どの世界でも)経営陣や中間管理職には
なかなか難易度の高いマネジメントです。
本腰を入れて取り組む覚悟が必要です。
【まとめ】
・新人が職場に求めることは心理的安全性と、手に職を付けるための育成体制。
・「見て、盗め」という育成は、教える側の能力が低いことを示している。
・再現性高く適切に育成できるかどうかが肝要。
・カリキュラムを段階的に並べ、
習熟段階のステップアップの見極めを適切に行い、
優しくフィードバックをしつつ、
自発的に階段を上るように啓蒙するのがポイント。
・育成体制の構築は、待ったなし。