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デパ地下商法に学ぶ

不況期の経営にはセオリーがあります。
それは、無理に新規客を追うよりも、
固定客を大切にするということです。
新規客を獲得するためのコストは、
固定客を維持するコストの5倍かかると一般的に言われています。
新規客の獲得よりも、固定客を維持することを重視するのが肝要です。

固定客を維持するためには、売りたい商品よりも
むしろ来店頻度の高い商品を大切に扱うことです。
例えば、百貨店であれば衣料品等ではなく食料品です。
デパ地下の強い百貨店が勝ち残るのは、
平成時代の百貨店の栄枯盛衰が証明しています。

百貨店には大きく2種類あります。呉服屋系と電鉄系。
呉服屋系の百貨店は、都市の一等地に鎮座し、
最上階で催し物をして集客し、
”シャワー効果”で下のフロアーに客を回遊させる
というビジネスモデルでした。
彼らの得意技は催事場の催し物で
「呉服B反市」「オーダースーツフェア」などの催事でした。
昭和の時代は好調でしたが、
衣食住が一通り足りてしまった平成以降の消費者には、
なかなか通用しなくなりました。

一方、電鉄系の百貨店は、
ターミナル駅から利便性の良い立地を選び、
日常生活に根差した豊富な品揃えの食料品(デパ地下)で集客し、
”噴水効果”で上のフロアーにも回遊させるというビジネスモデルです。
これは昭和4年に小林一三氏が大阪梅田に創業した阪急百貨店が原点です。
そのビジネスモデルは、約100年後の現代でも抜群の切れ味です。

これらを整理すると、低価格高頻度商品の強い事業は、
不況期に強いということです。
百貨店以外でも、例えば、商店街であれば、
八百屋、魚屋、肉屋が強ければ廃れません。
例えば、食品スーパーであれば、
生鮮三品(野菜・魚・肉)が強ければ廃れません。

それでは、動物病院ではどうでしょうか。
腕のいい臨床家は、ジェネラリストでありつつも、
任意の診療科のスペシャリストを目指し、
例えば腫瘍や循環器の症例を追いかけたくなるかもしれません。
経営という観点で便宜上分類すると、
腫瘍や循環器の疾患はいわゆる高価格低頻度商品です。
その症例を集めよう集めようとすることは、
百貨店に例えると、
呉服やオーダースーツを売ろう売ろうとしているようなものです。
全国から患者が集まるような循環器外科が得意な
超一流の動物病院等であれば話は別ですが、
一般的には不況期に高価格低頻度商品を深追いするのは危険です。
経営者は、百貨店(呉服屋系⇔電鉄系)の教訓に学ばなければなりません。

動物病院における低価格高頻度商品とは、
予防とか、下痢・嘔吐とか、食欲・元気なしといった症状等です。
いわゆるジェネラルです。
これらに真摯に寄り添うのが、電鉄系百貨店のデパ地下商法のようなものです。

不況期に好調な我々のクライアントは、基本的にセオリーを遵守しています。
開業何十年も経っている既存病院でも、今年の春は前年比2桁成長がザラです。
好調の要因を挙げるのであれば、
1次診療をかかりつけとしてしっかり寄り添っている点です。
低価格高頻度商品を大切に扱っています。その土台があってこそ、
CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)として
固定客(固定患者)との関係性を良好に発展させることが出来ます。
そして、任意の得意症例を早期発見することもできます。
つまり、デパ地下で集めた客を”噴水効果”で上のフロアーへ回遊させるように、
ジェネラルからスペシャリストまでシナジー効果を発揮しているのです。

不況期は、原理原則通りに経営することですね。

【まとめ】
・不況期は固定客に腰を据えて深耕する
・固定客を深耕するのであれば、利用頻度の高い商品をテコ入れする
・利用頻度の高い商品とは、低価格高頻度商品
・高価格低頻度商品を扱うことは否定しないが、
 それ以前にジェネラル×スペシャリストのバランスを重視することが肝要