ニュース

NEWS
  1. Home
  2. /
  3. ブログ
  4. /
  5. トリマーの年収について

トリマーの年収について

トリマーの年収について検証します。
まずは世間一般的な全業種の正社員の平均年収を性別に比較します。国税庁の民間給与実態統計調査(令和4年)によると、全業種における給与所得者(正社員)の平均(給与&賞与)は、男性が563万円、女性が314万円、男女で458万円でした。これが世間一般です。

トリマーの平均年収に関する公の正確なデータは確認できていませんので、ここではアナロジー(類比)になります。動物病院の現場では、動物看護に携わるスタッフのお給料と、トリマーのお給料は、その業務が重なることもあるので、近しい金額になると実感しています。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和5年)によると、動物看護スタッフ(Veterinary Nurse)は「その他の医療保険サービス従事者」に該当し、その平均年収(残業代、賞与含む)は313万円です。この313万円の方が、トリマーの年収としては参考になるのではないでしょうか。

動物看護スタッフ(Veterinary Nurse)の年収は、経験年数(性別)によって、以下のような数字になっています。
経験年数0年であれば、239万円(男性で266万円、女性で237万円)。
経験年数1~4年で、274万円(男性で301万円、女性で270万円)。
経験年数5~9年で、293万円(男性で337万円、女性で291万円)。
経験年数10~14年で、314万円(男性で328万円、女性で313万円)。
経験年数15年以上で、358万円(男性で493万円、女性で343万円)。
トリマーにも概ね当てはまるかもしれません。

それでは、トリマーの年収を建設的に底上げするために、どうすればよいのでしょうか。ベンチマーキングする先は、(人間向けの)理容・美容師です。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和5年)によると、(人間向けの)理容・美容師の平均年収(残業代、賞与含む)は379万円です。

(人間向けの)理容・美容師の年収は、経験年数(性別)によって、以下のような数字になっています。
経験年数0年であれば、250万円(男性で281万円、女性で237万円)。
経験年数1~4年で、289万円(男性で305万円、女性で281万円)。
経験年数5~9年で、381万円(男性で464万円、女性で347万円)。
経験年数10~14年で、443万円(男性で531万円、女性で373万円)。
経験年数15年以上で、500万円(男性で610万円、女性で421万円)。

注目すべきは、経験年数が5年を超えたあたりから、動物看護スタッフ(Veterinary Nurse)と比べて著しく上昇しています。実際に、(人間向けの)理容・美容師の賃金体系を検証してみましょう。

QBハウスさんの賃金体系を検証してみると、彼らのリクルートページでは、2024年の時点で、新卒スタイリストの給与は21.9万円ですので、年収は263万円です(名古屋の場合)。中途スタイリストの給与は30~39万円ですので、年収は360~444万円(静岡県の場合)です。店長の給与は36.8~41.7万円ですので、年収は442~500万円(静岡県の場合)です。この給与水準というのは、首都圏のデータであればもう少し高いのですが、全国での平均的な静岡や名古屋を拾ってみると、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和5年)の理容・美容師の平均年収(残業代、賞与含む)の経験年数ごとの数値に合致しています。QBハウスさんはこれ以外に、賞与や手当も支給される可能性があるようです。

収益性に関して、日本政策金融公庫 業種別経営指標(2023年度)によると、理容業の経常利益率の中央値は▲3.5%、一部の黒字企業でも5.8%です。一方、QBハウスさんは2023年6月決算で8.7%、2024年6月決算で7.9%です。上場企業の全業種の中央値が5.1%、10%で優良企業ですから、QBハウスさんの健闘ぶりが数値に表れています。

同社(キュービーネットHD)の北野社長によると、従業員の処遇改善を行って離職率を下げる経営方針にしつつ、同時に最低賃金の上昇などを考慮すると、人件費は今後も上昇せざるを得ないと想定しているそうです。その場合、適切な利益を確保するためには料金改定(値上げ)も視野に入れているとのこと。現在7店舗展開している「QB PREMIUM」はカット+スタイリングという新しい業態で、価格は1800円(都心部は2000円)。初期に出した店舗はかなり好調に推移している様子で、顧客の要望をしっかり理解した上で、そのサービスレベルを「QBハウス」に移行していけば、長期的には1800円への値上げも十分に考えられるそうです。

このお手本事例をベンチマークしつつ、願わくばトリマーさんの平均年収を上手に底上げしたいところです。彼らからベンチマーキングするべき点は、レバレートを意識して、10分1350円を維持するということでしょう。

年収がすべてではありませんが、トリマーさんの年収を上げられる事業所は、採用・育成・定着においてアドバンテージが得られますので、この先の経営環境で十分サバイバル可能と考えられます。

【まとめ】
・トリマーの年収は、動物看護スタッフ(Veterinary Nurse)に準じると仮定すると、
平均年収(残業代、賞与含む)は313万円。
・(人間向けの)理容・美容師を理容・美容師の平均年収は379万円。
・レバレートを意識すれば収益性が高まり、処遇改善の余地が生まれる。
・今後も最低賃金は上昇するので、適切な利益を確保するには値上げを視野に入れておく必要あり。