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ピンチはチャンス(変化に対応して進化しよう)

春の予防シーズンの準備にお忙しいことと思いますが、如何お過ごしでしょうか。巷では、動物病院の倒産急増、2年連続の最多という情報が流れていますので、現場目線から検証してみようと思います。ちょっと長いですが、ご参考になれば幸いです。

S(Subjective:主訴・現状認識)
動物病院業界の倒産・廃業の実態

先週リリースされた東京商工リサーチのデータでは、これまで倒産が少ない業種の一つだった動物病院で、倒産件数が2年連続で過去最多を更新しているとレポートしています。

その件数というのは、1996年度から2023年度までの28年間で、合計してもわずか数件という極めて少ない状況でした。ほとんどの年が0件か1件で、最多でも2012年度の3件という水準だったのです。それが、2024年度(2024年4月〜2025年3月)は5件、2025年度(2024年4月〜2026年1月までの10カ月間)は8件と増加しています。

東京商工リサーチは倒産件数とは別に、休廃業・解散というケースも集計しており、倒産と休廃業は法的には異なりますが、そちらの数字でいくと2024年(1月〜12月)は2013年以降で最多の46件だったそうです。これに2024年の倒産件数5件を足すと、51件となります。

農林水産省の統計によると、動物病院(小動物臨床)の開設届出数(年末時点)は、2022年12,616件、2023年12,706件(増加率0.7%)、2024年12,846件(増加率1%)と増加しています。

東京商工リサーチでの上記51件を、2024年の動物病院届出数12,846件で除すと、

51÷12,846=0.397%
となります。これが動物病院の廃業・倒産の割合といえるのではないでしょうか。ただし、東京商工リサーチのデータは「把握できた件数」であり、実際にはもう少し多い可能性もあることは念頭に置く必要があります。

ちなみに、中小企業白書(2025年版)によると、日本の企業の廃業率(2023年度)は3.9%、開業率(2023年度)も3.9%で、開業率と廃業率が均衡しています。動物病院の廃業・倒産割合は、一般企業の廃業率よりも1桁少ないことになりますので、とても堅実な事業ということができます。地域に根差した動物病院は、飼い主さんとの信頼関係によって長年支持されてきました。「うちは全然大丈夫だよ」という院長先生が殆どではないかと思いますが、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」と言います。東京商工リサーチのレポートを警鐘として受け止め、世の中の経営環境がどのように変化しているのかを把握しておく必要があるでしょう。

O(Objective:客観的所見・環境分析)
経営環境の変化という客観的事実

一般企業は厳しい変化に直面しています。2024年の全国の倒産件数は10,006件に達し、2021年を底に増加傾向が続いています。また、休廃業・解散件数も2024年には約7万件となり、増加傾向に転じています。

賃金面で大手に劣る中小企業では、人材の流動化が進み、より賃金の高い職場を目指す人が増え、人材の確保が難しくなり、業績にも影響しているようです。東京商工リサーチは「2026年は『賃上げ疲れ』が経営に深刻な影響を及ぼす企業を中心に、倒産の増加も危惧される」と警鐘を鳴らしています。加えて、ゼロゼロ融資などのコロナ借換保証の返済開始、金利上昇など、複合的なリスクが経営基盤を揺るがしました。企業はコスト削減と収益改善という課題に直面し、抜本的な経営戦略の再構築を迫られた一年でした。そして、後継者不足や経営者の高齢化による「あきらめ廃業」も増えているようです。

動物病院が堅実な事業と言えども、どんな経営者でも常に安泰というわけではありません。大きなリスクがなかったペットブーム時は、普通に経営していれば自然と繁盛しました。しかし、経営環境が大きく変化している今、経営課題を早期発見できずに倒産というステージまで悪化してしまうのか、あるいは経営課題を早期発見して早めに対策しておくかで、この先の明暗が分かれます。東京商工リサーチによると、動物病院の倒産でも、「業績不振」が主因のケースが大半を占め、「人手不足」が影響したケースも複数見られます。これを対岸の火事と考えるか、先行指標として学ぶかは経営者の自由ですが、数字は正直です。経営におけるリスクの兆しは、現預金の残高に現れます。経営課題を克服している病院の現預金は順調に増加します。一方、臨床の現場に忙殺されてしまっている院長は経営課題をトリアージしてしまい、気付いたら現預金がどんどん減少していきます。春の予防シーズン前は1年を通じてとくに現預金が少なくなる季節ですので、一度試算表を見直しておかれるとよいでしょう。月商の1ヶ月分を下回る残高であれば、イエローカードと思っておくべきでしょう。

ここで、一般企業にも動物病院にも当てはまる経営環境の変化を整理してみます。

1)働き方改革

残業時間をできるだけ撲滅せざるを得なくなりました。適正な人員体制を維持しなければならず、少数精鋭での精神論が通用しなくなりました。獣医師の勤務時間管理、動物看護師の労働環境整備が、今や事業継続の必須条件となっています。従業員に有給休暇を適切に取得させなければなりませんし、従来よりも従業員の頭数を増やさなければ現場が回らないので、人件費の総額は増加しています。

2)最低賃金の上昇

この5年間で最低賃金(全国加重平均)は2020年10月の902円から2024年10月の1,055円へと17.0%も上昇しました。2025年10月にはさらに1,121円となり、2020年から5年間で実に24.3%の上昇となっています。今後も続くとみられる上昇に、小規模病院がどこまで対応して人材を確保していけるかが大きなポイントとなります。特に若手の動物看護師の給与水準を最低賃金以上に保つことは、採用競争力に直結します。

3)諸物価高騰

総務省によると、消費者物価指数は2020年を100として、2026年1月時点で112.9に上昇しています。約13%の物価上昇が起きているということです。医薬品、医療材料、光熱費、すべてのコストが上昇しています。中小企業白書でも、「物価高」を要因とした倒産の件数が増加していることが指摘されています。何もしなければ、これらが原価率をダイレクトに上昇させ、収益を吹き飛ばしてしまいます。

続いて、動物病院に特有の経営環境の変化を整理してみます。

4)高度医療への投資負担

CT、MRI、内視鏡などの高度医療機器への投資負担が重くなっています。飼い主さんの医療ニーズが高度化し、ペット保険の普及もあって、本格的な検査や治療を求められる機会が増えています。しかし、高額機器を導入しても、一定以上の割合で適切に稼働させることができなければ、「仏作って魂入れず」になってしまい、経営を圧迫します。

5)競争環境の変化

大手企業による病院展開や、専門特化型の動物病院の台頭により、競争環境が激化しています。かつては「家から近い」という理由で選ばれた地域密着型の病院も、飼い主さんの目がシビアになり、技術力や設備、説明の質で比較されるようになっています。診療レベルを上げる努力を後回しにしてしまうと、「安売り」と「愛想のよさ」で戦わざるを得ず、患者層も”安けりゃいいや”という意識の患者さんばかりになりかねません。

A(Assessment:評価・解釈)
ピンチはチャンス:変化をどう捉えるか

しかし、ここで視点を変えてみましょう。変化に対応できない病院は苦戦しますが、プロアクティブに変化を機会と捉えて進化できる病院は、さらに強くなれるのです。働き方改革は、業務を見直し、チーム医療を進化させる絶好の機会です。最低賃金の上昇は、賃金体系と評価制度を整備し、優秀な人材が定着する組織を作るきっかけになります。物価高騰は、診療報酬を適正化し、提供する価値を飼い主さんに正しく伝える契機となります。競争激化は、自院の強みを明確にし、差別化戦略を打ち出す好機なのです。

そして、「チャンス」に乗ることが出来ると、5年後10年後の企業価値は雲泥の差となるでしょう。例えば5年後10年後に事業承継でイグジット(ハッピーリタイア)をイメージしている院長は、大げさな表現かもしれませんが、将来の企業価値を左右する運命の分かれ道になると思います。

P(Plan:計画・実行すべきこと)
変化をチャンスに変える6つの進化の方向性

変化に対応して進化する病院には、以下のような対応策が求められます。

(1)チーム医療体制の確立

獣医師の時間を「診療・判断・学習」に集中させる体制づくりを進めましょう。清掃・補充・滅菌・在庫管理などのオペレーション業務を動物看護師や事務スタッフに適切に分担することで、獣医師が文献を読み、症例を振り返り、診断推論を言語化する時間を確保できます。この時間が削られると、数カ月から1年単位で病院の医療品質に響きます。役割分担を明確にし、それぞれのプロフェッショナルが最大限に力を発揮できる環境を整えることが、働き方改革への最良の対応であり、医療品質の向上にもつながります。

(2)人材が定着する組織づくり

従業員の賃金(とくに若年層)は最低賃金を下回らないように賃金体系をアレンジしましょう。また、中堅・ベテランの獣医師や動物看護師も公平に年収が上がるように賃金体系と評価制度を整備しましょう。代診獣医師が長く働き続けられる環境づくりが、病院の医療レベルの維持・向上に直結します。人件費の上昇は確かにコスト増ですが、優秀な人材が定着することで、採用コストの削減、医療事故のリスク低減、飼い主さんの満足度向上というリターンが得られます。

(3)価値を適正に伝える診療報酬設計

原価や人件費や経費が上昇した分、診療報酬体系も見直しをしましょう。ただし、単に値上げをするのではなく、提供している価値を飼い主さんに丁寧に説明することが重要です。なぜこの検査が必要なのか、なぜこの治療を提案するのか、どのような結果が期待できるのか。インフォームドコンセントを徹底し、納得と信頼を得たうえで適正な診療報酬をいただく。これは、病院も飼い主さんもウィン・ウィンの関係を築くための基本です。

(4)戦略的な投資判断

高額な医療機器を導入する際は、投資回収の見通しを慎重に検討しましょう。診療圏の人口、競合病院の状況、自院のシェア、スタッフの技術レベルを総合的に判断し、本当に必要な投資かどうかを見極めることが重要です。場合によっては、近隣の専門病院との連携という選択肢もあります。「持たない経営」も一つの戦略です(いわゆる弱者の戦略)。一方、自院の得意な症例のシェアが一定以上あれば、強者の戦略として一気呵成に投資すべきかもしれません。自院の方向性に合った投資をすることで、無理のない成長が実現できます。

(5)明確な差別化戦略の構築

総合診療なのか、特定分野を強化するのか、予防(先制)医療に注力するのか、ホスピスケアまで対応するのか。自院の強みと方向性を明確にし、飼い主さんに選ばれる理由を作りましょう。「何でもできる」ではなく、「この分野ならこの病院」という位置づけを確立することが、競争環境の中で生き残る鍵となります。差別化は、価格競争から脱却し、価値競争で勝つための戦略です。

(6)デジタル化と効率化の推進

予約システム、電子カルテ、在庫管理システムなど、デジタルツールを活用することで業務効率が大幅に向上します。スタッフの負担を減らし、ミスを防ぎ、飼い主さんへのサービス品質を高めることができます。初期投資は必要ですが、長期的には人件費の適正化や顧客満足度の向上につながります。

上記(1)〜(6)はオーソドックスなマーケティングとマネジメントの話に過ぎませんが、個々の動物病院ごとに最適な手順と組み合わせがあります。それらを、優れたオーケストラの交響曲のハーモニーのように調和させることが肝要です。自院の強みを活かした戦略を描き、自院独自に実行に移していく。その過程で、経営の専門家やコンサルタントなど、信頼できるパートナーに相談しながら進めることも有効です。

パートナー選びの落とし穴
変化の時代だからこそ、一人で抱え込まず、知恵を借り、共に考える。そうした姿勢が、病院の未来を切り拓きます。ただし、パートナー選びには注意が必要です。

例えば、大きな病院で若い代診に練習台にされるのは嫌ですよね。まぁ、軽症例なら許容範囲でしょう。しかし、重症例や難症例は、ベテランのプロフェッショナルに適切に診てもらうのが安心です。経営も同じです。誰でも繁盛する時代は、若手コンサルでも間に合いました。しかし、昨今の経営環境は複雑で、まさに「難症例」といえます。

また、経営コンサルティング業界でよくあるのが、「グループ勉強会」という手法です。初学者もリーディングカンパニーもごちゃまぜにして、みんなで学びましょうというスタイル。コンサル会社にとっては効率的で、若手にも活躍の場が創造できますが、あなたの病院の個別事情は置き去りにされがちです。開業3年目の病院と、開業20年のベテラン病院では、課題がまったく違います。にもかかわらず、同じ勉強会で同じ内容を学ぶのは、果たして経営者にとって効率的でしょうか。

理想のパートナーとは
では、どのようなパートナーを選ぶべきでしょうか。一般論として、以下の条件を満たすコンサルタントが理想的です。

(A)十分な経験年数がある

動物病院業界を10年、20年と見続けてきた経験があれば、ペットブームの追い風の時代も、今のような厳しい時代も両方知っています。だからこそ、「今何が起きているのか」を大局的に判断できます。ただし、ベテランが担当してくれればよいですが、チーム制と称して若手が担当する場合は、チーム制の中身に留意が必要です。動物病院のチーム医療に例えると、最終責任は院長が負うものの、コメディカルや新人が犯してしまうヒューマンエラーは撲滅が困難です。その患者さんの心中たるや…。同様に、コンサルティングのチーム制にも限界があり、事業規模に比例して残念な対応(クレーム案件)が増加します。そのクライアントの心中たるや…。

(B)個別対応が得意である

あなたの病院の立地、規模、スタッフ構成、院長の年齢、得意分野、症例毎のシェア、すべてが他院とは違います。画一的な勉強会ではなく、あなたの病院だけのためのオーダーメイドの戦略を一緒に考えてくれる。そういう個別対応ができるかどうかが重要です。例えば、一般企業(異業種)ではマーケティングにシェア理論を活用します。これができないと、自社が取るべき戦略を決められません。シェアの低い会社が販促を打つと、それを見た消費者はシェアの高い会社に行くというのがセオリー(常識)だからです。
もしも院長が特定の症例を伸ばしたいと考えても、その症例が犬猫別に何パーセントのシェアを占めているのかが分からなければ、手の打ちようがありません。シェアが低いのに「院長、〇〇の専門性をWEB広告でPRしましょう。ガイドライン的にはOKです!」というのでは、“下手な鉄砲撃つだけ損”です。広告会社の営業マンじゃあるまいし、経営コンサルタントたるもの、シェアでタイミングを見定めるのが鉄則です。昨今の経営環境では、似非(エセ)コンサルタントは退散すべきですね。

(C)異業種の知見がある

動物病院業界だけに閉じていると、業界の常識が世間の非常識だったりします。他の業界の成功事例や失敗事例を知っていると、動物病院にも応用できる視点が広がります。昨今の経営環境では、アナロジーという類比の学問を使ってこそ、百選危うからずです。

(D)事業承継まで一気通貫で対応できる

とくに、近未来に事業承継を想定するのであれば、未来からの逆算が肝要です。「5年後に譲渡する」と決めたら、今から何を準備し、どういう経営をしておくべきか。症例毎のシェア分析、スタッフの育成、診療報酬体系の整備、財務体質の改善等、すべてが事業承継の成功につながります。「あぁ、5年前にこれをやっておけばウン千万円高く売れたのに…」と後悔しないために、上記(1)〜(6)の対応策と事業承継を切り離して考えるのではなく、地に足の着いたマーケティング、実践的な管理会計、理に叶った財務会計などを、一気通貫で戦略として描けるコンサルタントとのご縁を持てるのが理想です。

(E)商圏保証をしてくれる

目先の売上欲しさに、商圏(診療圏)が被っているのに競合する動物病院から受注してしまう経営コンサルタントの話を耳にします。ノルマが大変なのかもしれませんが、クライアントに対する明らかな背任であり、機密情報がダダ洩れしかねず、道義的に許されないことです。一商圏(診療圏)一社主義を厳格にコミットしているコンサルティング会社を選ぶべきでしょう。

さて、このような条件を満たすコンサルタントは、実際にどれだけいるでしょうか。

動物病院業界で20年以上のキャリアがあり、異業種の経営にも従事し、大局観を持ち、個別対応を重視し、一商圏(診療圏)一社主義で、事業承継まで一気通貫で対応できる。そういうコンサルタントを探すと、選択肢は限られてくるでしょう。

弊社は、その条件をすべて満たす1社であると自負しています。もちろん、これは自己紹介ではなく、消去法の結果です。

経営環境が厳しくなればなるほど、そして経営課題が「難症例」になればなるほど、ベテランのプロフェッショナルな経営コンサルタントに相談する意義が高まります。

春の予防シーズンを前に、一度、試算表と向き合い、自院の現状を客観的に診断してみてください。そして必要であれば、信頼できるパートナーとのご縁を大切にしながら、ピンチをチャンスと捉え、さらに進化していくことを心から応援しています。

益々のご繁盛をお祈りします。