⓪小さな組織は、優秀なリーダーがチームを牽引し、成長していきます。優秀なリーダーは、その能力を発揮し、プレイングマネージャーとして成果を出し続けます。すると、自分の能力そのものが成果に結びついているわけですから、自分が大黒柱だと自覚するでしょう。そのような気概がなければ、リーダーは務まりません。目安として、事業規模が売上5000万円、スタッフ数5~7人位までの院長が該当するのではないでしょうか。(個人差あり)
①リーダーがプレイングマネージャーとして大黒柱の自覚をすると、意思決定をする際に自分のモノサシで判断するようになります。その判断は、殆どの場合で正しいでしょう。そのような状況が続くと、優秀なリーダーでも錯覚することがあります。「この組織は俺のものだ」と。それが高じると、卑近な例で恐縮ですが、ドラえもんに登場するジャイアンのように「お前のものはオレのもの、オレのものはオレのもの」と考え、驕り・高ぶり・傲慢・自惚れのリスクが出てくることがあります。ジャイアンの例えは言い過ぎかもしれませんが、出木杉君のような優等生だったとしても、スパンオブコントロールといって統制の限界が5~10人(7人説もあり)ですので、スタッフ数が増えてくると物理的に目が届かなくなります。すると、寄り添わないマネジメントが発生するリスクが生じますので、スタッフからは結果的にジャイアンにみえてしまう危険性が残ります。事業規模が売上5000万~1億円、スタッフ数5~15人位までの院長に該当する場合があるのではないでしょうか。(個人差あり)
②リーダーは、退職者が複数発生して人手不足に陥ったり、大きなクレームを抱えて気が滅入るようなときは、いろいろと気づくようになります。「自分はジャイアンだったのではないか」と。そして、職場ではもっとチームワークを大切にしようと考えるようになり、プレイングマネージャーから徐々にマネージャーに軸足をシフトし始めたりします。卑近な例で恐縮ですが、分かりやすくジャイアンの比喩を継続させていただくと、日常のジャイアンが劇場版のジャイアンにキャラ変するようなものでしょう。普段のいじめっ子が、東映まんがまつりの映画の中で、皆で冒険に出掛けると“いい奴”に変身するというお約束のような設定です。同時に、スパンオブコントロールの観点から、分業でのマネジメントを検討するようになります。目安として、事業規模が売上1億~2憶円、スタッフ数10~25人位までの院長に該当する場合があるのではないでしょうか。(個人差あり)
③リーダーが経営のコツをつかみ、スムーズに回り始めると、いろいろと感謝の気持ちが湧いてくるようになることがあります。「あぁ、自分はなんて幸せ者なんだ。好きなことを仕事にして、好きなようにやらせてもらい、優秀なみんなに支えて頂いて、ありがたいなぁ」と。卑近な例で恐縮ですが、分かりやすく敢えてジャイアンの比喩で伏線回収させていただくと、木こりの泉に落ちた“きれいなジャイアン”です。聖人君子のような哲学を持ち、広い視野でペット共生社会の実現に貢献するような院長です。そして、スタッフは職場の仲間というよりも、人生を共に歩む同志として考えるようになってくださります。ここまでくれば、「心の友よ~♪」と言ってもまったく違和感はありません。同時に、スパンオブコントロールの観点から、組織的なマネジメントへの移行を検討するようになります。目安として、事業規模が売上3億円以上、スタッフ数30人以上の院長に該当する場合があるのではないでしょうか。(個人差あり)
このように、事業規模の拡大に応じて、リーダーが考えるチームの概念が進化します。シンプルにルール化すると、①日常版ジャイアンのように「チームを自分のものと勘違いする」のか、②劇場版ジャイアンのように「チームを同じ目的をもつ職業人の集まりと考える」のか、③きれいなジャイアンのように「チームを同じ人生を歩む同志と考える」のか。マネジメントを分かりやすく解説すると、“ジャイアン進化論”という見方ができます。
もしも、現場で思うようにモノゴトがすすまないときは、ひょっとしたら、進化のタイミングかもしれません。そして、女神様に試されているのでしょう。「貴方が目指しているのは、①ですか?それとも③ですか?」と。スムーズに③へ進化できると、道が開けるものです。
①日常版ジャイアンが「心の友よ~♪」と言っても滑稽なだけですが、③きれいなジャイアンに進化するにつれ、「心の友よ~♪」が自然にフィットします。③のリーダーは、部下や個々のスタッフに貢献したいと思いますし愛着が湧きます。そのようなチームに所属するスタッフは、チームのために貢献したいと考えますし愛着が湧きます。その相思相愛の度合いが深い状態を、アカデミックに横文字でいうと、エンゲージメントが深いと表現します。要するに“組織の一体化”が深まった状態です。古き良き家族型経営では当たり前のハナシで、それが一周回って、組織の一体化の重要さが再確認されているのかもしれません。エンゲージメント(組織の一体化)の深さと生産性の高さは比例します。そして、離職率とは反比例します。
リーダーや経営者は、①から③へ進化するにつれ、プレイングマネージャーからマネージャーへ軸足をシフトすることになります。具体的には、臨床家の時間を削り、経営者の時間を増やします。自分のやりたいことを我慢して、組織のために時間を割くのですから、忍耐力が必要です。そして、胆力を練っているうちに、自然と器が大きくなります。
エンゲージメントを高める手段として、1対1(1on1)のコミュニケーションや個人面談が効果的です。その際、近況を確認しつつ、よい点を褒め、勇気づけます。あれこれ指導せず、改善点のヒントに気づくように示唆します。
それらを通じて、「この職場で頑張っていれば、安心して手に職をつけられるぞ」というキャリア安全性が組織の中で高められれば理想です。
“ジャイアン進化論”でエンゲージメントを高めたい方は、一度ご相談ください。
【まとめ】
・エンゲージメントが高い組織は、生産性が高く、離職率が低い
・エンゲージメントを高めるには、リーダーの器を大きくすること
・エンゲージメントを高めるには、1on1面談に時間を投下すること
・エンゲージメントを高めるには、コミュニケーションを大切に扱うこと