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動物病院のスタッフに肚落ちするような賃金体系

世間では最低賃金のアップとか、企業の賃金上昇とか、いろんな情報が目につきます。スタッフの皆様も、ご自身の賃金が上がるのかどうなのか、気になるという声をよくききます。

賃金とは、労働の対価ですから、働かなければもらえません。ノーワーク・ノーペイの原則は労働基準法に謳われている通りです。そして、労働を提供したら、最低賃金を上回る金額で適正に支払われます。最低賃金が上がったら、それを下回らないように、お給料も調整されます。ここまでは、言わずもがなの話です。

さて、ここからは労働基準法に縛られない建設的な話になります。世間一般のお給料が、最低賃金とは関係のないところで上昇しているのであれば、採用における競争原理が働き、自社も見直さなければならなくなります。とはいえ、資力の限られた中小企業が、大手企業と同じように大盤振る舞いできるかというと、なかなか困難です。さて、どうしたものかと。

労働基準法に縛られない建設的な賃金体系の話は、社労士さんは(特定社労士だったとしても)守備範囲外のことが多いです。それゆえ、当社のクライアントでは、賃金体系にメリハリをつけて独自に整備するようにしています。例えば獣医師であれば、年収1000万円が目指せるような賃金を標準装備しますし、コメディカルでも国家資格手当云々というよりも、貢献度をしっかり評価して、それなりの年収を目指せるように設計しています。

もちろん、何もしなくても大盤振る舞いされるわけではありません。悪しき平等主義は、建設的な賃金体系には必要ありません。病院に貢献した人が公平にそのような報酬を受け取る必要があるのです。つまり、信賞必罰でお支払いしますよ、という考え方です。

それでは、ここでいう貢献とは何でしょうか。獣医師やトリマーであれば、ご自身の担当された売上金額が明確になりますから、経済的な貢献を病院が期待することができるでしょう。また、診療レベルの向上という意味でも、臨床的な貢献を病院が期待することができるでしょう。さらには、若手スタッフの育成という、教育者的な貢献を病院が期待することもできるでしょう。いずれも、病院が何を期待するのかは、経営陣が決めることです。
(従業員が四の五の言うことではありません)

これらの「病院が期待すること」をクリアーすることを条件に、それに見合った賃金をお支払いする設計をすれば、メリハリのある賃金体系は整備が可能です。その際、貢献度合いに対して、どれくらいの割合で報酬をお支払いするのかを病院サイドが人件費比率や労働分配率で決めておけば、病院サイドは損をすることがありませんので、安心して信賞必罰をアナウンスできます。この場合も、どんな割合でお支払いするかは、経営陣が決めることです。(従業員が四の五の言うことではありません)

これらの擦り合わせを、スタッフの皆様としておくことで、賃金に対する不満は解消されやすくなります。逆に、これらが未整備だと、スタッフの皆様の中に「当院は安い給料で働かせるブラック企業だ」というおかしな被害妄想が生じかねません。

とくに、他の同業者とのアバウトな比較による「隣の芝生が青く見える現象」を放置しておくのはNGです。仮に近隣の動物病院の勤務医が自分よりも多い賃金を貰っているといっても、それに見合う「病院の期待すること」や「どんな割合ではお支払いするか」等は、個々の病院ごとに違います。だからこそ、当院の場合を論理的に丁寧にアナウンスしておくことが肝要です。

分かりやすい例で言うと、動物病院で100円の売上を上げたら、そのうち従業員の人件費に使えるのは通常25円です。売上に対する従業員の人件費の比率は約25%です。もちろん診療レベルや事業規模によって若干ブレますが、仮の話として、そういう与件で検証してみます。また、数字という定量評価以外にも、定性評価をするのが一般的ですが、ここでは分かりやすく定量評価のみで検証してみます。

【ケーススタディ1】
年収600万円の獣医師1名と、年収300万円のVT1名のユニットであれば、総人件費は900万円になります。その900万円の人件費を賄うために必要な売上は、25%で割り戻せば求められます。900万円÷0.25=3600万円です。

【ケーススタディ2】
年収600万円の獣医師1名と、年収300万円のVT2名のユニットであれば、総人件費は1200万円になります。その1200万円の人件費を賄うために必要な売上は、25%で割り戻せば求められます。1200万円÷0.25=4800万円です。上記のケーススタディ1よりも必要な売上が大きいですが、その分、コメディカルがあれこれやってくれますので、効率的に働けばケーススタディ2の方が稼げる場合もあります。

このように、獣医師とコメディカルの人員構成や、求められる売上金額(予算)がバラバラだったとしたら、【ケーススタディ1】と【ケーススタディ2】を同列で比較するのはナンセンスです。しかし、多くの場合、従業員というのはそのような知識が乏しく、闇雲に「隣の芝生が青く見える」ものであり、妄想からの決めつけをすることが多々あります。だからこそ、論理的な賃金体系を整備して、スタッフに丁寧に説明をすることが肝要です。

資力の限られた中小企業が、大手企業と同じように賃金を大盤振る舞いできないとしても、上記のように賃金体系を論理的に構築して、丁寧に説明することはできると思います。それで「隣の芝生が青く見える」現象が逓減でき、モティベーションの向上につながるのであれば、すぐにでも取り組むべきではないでしょうか。

貴社の賃金体系は、スタッフに肚落ちしていますか?賃金体系の整備と、その擦り合わせが必要な場合は、一度ご相談ください。

【まとめ】
・賃金とは、平等ではなく公平に払うもの。
・公平とは、信賞必罰であるということ。
・ベースアップはほどほどに、貢献度が上がったら手厚く。
・何をどれだけ頑張れば、どう報われるかを倫理的かつ明確に。
・スタッフに分かりやすく丁寧に説明すれば、モティベーションに。