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動物病院の理念について

秋は外来数が落ち着くシーズンです。そして、動物病院業界の学会シーズンでもあります。この時期は、学会等で同業者や同級生との交流があり、いろんな情報交換をします。「え、他所ではそんな職場環境なの?転職しようかな・・・」と、中途採用の求職者が活発になりやすい時期です。人手不足の病院であれば、優秀な即戦力を採用したいところです。

その一方で、離職リスクも高まります。職場環境に不満のあるスタッフは、秋の夜長に物思いに耽り、転職をあれこれ思案する季節でもあります。そして、「院長、ちょっとお話があるのですが」という退職の申し出があることも・・・。

つまり、秋というのは、「中途採用」というチャンスと、「既存スタッフの離職」というリスクが混在する、“諸刃の剣“のようなシーズンです。

既存スタッフの離職を防ぎ、即戦力スタッフの中途採用を有利にするためには、どうすればよいのでしょう。例えば、労働条件を魅力的にし、賃金アップ等を画策すればよいのでしょうか?まぁ、それもよいかもしれませんが、賃上げ競争に勝ち抜くにはどうしても資本力が必要です。中小企業にできることは限られています。やはり、現実的には、中小企業はスタッフの戦意を高揚させて戦うのが王道です。スタッフ個々のモティベーションを高め、最高のチームワークで臨むことです。

モティベーションを高め、最高のチームワークを実現するには、どうするか。それは、理念を明確にして、それを浸透させることです。そして、良好な人間関係を維持することです。すると、チームワークがよくなり、組織が一体化します。つまり、「理念×良好な人間関係」が中小企業におけるマネジメントの肝です。

では、会社として理念を取り纏めるには、どうしたらよいのでしょう。弊社のクライアントでは、経営者が理念を明確に正しく取り纏めていらっしゃれば、それを尊重しています。一方、漠然とした想いはあるけれど、理念として言語化できていないとか、内容が偏っているような場合は、我々が触媒となって、取り纏めのサポートをしています。その際、「①現場目線での理念」だけに小さくまとまるのではなく、「②社会的使命を実現する」ことを加味するように意識しています。

もちろん、現場の基本的な業務ができなければ、社会的使命なんて10年早いハナシかもしれません。しかし、仕事が出来ればそれでいいという考え方だけでは、スタッフはモティベーションが上がりません。その状況を放置すると、離職率が上昇してしまいます。

それでは、社会的使命とはなんでしょうか。例えば、日本獣医師会の獣医師倫理綱領では、次のように謳われています。
「獣医師は動物の健康に責任を有するとともに、人の健康についても密接に関わる役割を担っており、人と動物が共存できる環境を築く立場にある。
獣医師は、また、人々がうるおいのある豊かな生活を楽しむことができるよう、広範多岐にわたる専門領域において、 社会の要請に積極的に応えていく必要がある。」
この綱領の素晴らしい点は、目の前の業務だけでなく、世のため人のためという視点を併記しているところです。

このような崇高な社会的使命は、約30年前の1995年に先輩獣医師の先生方が取り纏めたものですが、現在でも十分通用します(しています)。もちろん、30年前と比べて動物病院の診療レベルは進化しており、学ばなければならない臨床のことが多岐に渡りますし、そのうえ人手不足ですから、当時と比べて現場に余裕はなく、社会的使命どころではないのかもしれません。しかし、30年前と比べて、患者さんやスタッフが求める動物病院像というのは、要求レベルが高まってきています。身近な例を挙げると、30年前は順番制が当たり前で、待ち時間が長くなっても患者さんは黙って待ち、残業が長くなってもスタッフは辛抱してくれました。しかし、昨今は予約制が浸透していますし、待ち時間や残業時間は排除すべき時間になっています。つまり、社会的使命として、マネジメントのレベルを上げなければ、患者さんにもスタッフにも敬遠されてしまうのです。

また、社会的使命というのは概念として奥が深いです。待ち時間や残業時間の問題だけではありません。「うるおいのある豊かな生活」というのを標榜するのであれば、読んで字のごとく、社会のお役に立つ具体論を確立する必要があるでしょう。病気を治し予防する、或いはトリミングで可愛くして差し上げるだけでも、世の中のお役に立っているのですが、ペット共生社会への貢献という概念をどこまで浸透させられるか。そこが求められます。

ある繁盛動物病院では、「人と動物、子供たちが安心して暮らせる社会を創る」という理念を掲げ、それに共感するようなチームワークを大切にしています。例えば、キャンプ場を設け、東南海トラフ地震に備え、野外生活をペットと一緒に過ごし、学び、体験してもらう場を提供しています。ドッグランやカフェも設け、「うるおいのある豊かな生活」を提供して、ペット共生社会へ貢献しようと取り組んでいます。自分のことだけを考えているのではなく、世のため人のためを想っている点がとても秀逸です。そして、有言実行されるところが流石です。

もちろん、中小企業はできることが限られていますので、身の丈に合った社会的使命を啓蒙して、意識改革をするだけでも素晴らしいです。自社にとって、ペット共生社会の実現とはどういうことなのか。どうすればお客さんもスタッフも地域社会もハッピーになるのか。あらためてペットビジネス事業者としての理念とその浸透のさせ方を見直してみてはいかがでしょうか。

人手不足を解消し、離職率を下げたい方は、一度ご相談ください。

【まとめ】
・賃上げには限界があるが、モティベーションを高めようと思えば青天井。
・中小企業のストロングポイントは、組織を一体化しやすいということ。
・中小企業こそスタッフの目線を上げ、モティベーションを高めるべし。
・「理念×良好な人間関係」が肝。
・理念には社会的使命も織り込むべし。