世の中には職業選択の自由があります。誰しも、人ぞれぞれの想いがあって、自分の意思で現在の仕事をポジティブに選択したと思います。会社にしても、創業者には創業原点があって、それがポジティブな理念として存在していると思います。
しかし、仕事とは自分の趣味の世界ではないですし、利害関係者が存在しますから、どうしても物事をクリティカルに考えることが多くなります。人員の離職率が上がらないようにするにはどうしたらよいのか。現行のサービスや商品は陳腐化していないか。運転資金は充足しているか。自分はひょっとして浦島太郎の様に最新の情報にアップデートできていないのではないか。生産性を上げるにはどうすればよいか。うちの会社独自のノウハウって、まだまだ弱いのではないか。などなど、ヒト、モノ、カネ、情報、時間、知財のあらゆる分野で、ネガティブな心配事が尽きません。
そのような心配事をエネルギーに、いろいろと勉強して成長すればよいのですが、ネガティブな心配事が克服できないような状態が長く続くと、よほどメンタルがタフでなければ、息切れしてしまいます。経営者がタフだったとしても、取り巻く幹部スタッフがネガティブに支配されてしまうと、そんな組織には負け癖がついてしまいます。段々と表情が般若の様になり、愚痴、泣き言、文句、不平不満ばかりを撒き散らすようになってしまいます。
そうならないように、バランスの維持が大事です。心配事というネガティブな要素に対して、ポジティブな理念や外の世界の情報に触れつつバランス修正して、良好な状態、言わば、ウェルビーイングを目指すことで道が開けます。(この場合のウェルビーイングとは、『より豊かな人生』へ生成発展することとご理解ください)
ポジティブ、ネガティブ、それらを司るウェルビーイング。この3要素は、正・反・合の弁証法で説明できます。「テーゼ(理念)」、「アンチテーゼ(心配事)」、「ジンテーゼ(ウェルビーイング)」となります。シンプルに例えると、「事業は提供する商品の品質が大事である。」これがテーゼです。「しかし、人材の育成や資金繰り、集客などの経営の勉強もしなければ倒産してしまうよ。」これがアンチテーゼです。「だったら、商品の品質を高めつつ、経営もしっかりと勉強して、理想の事業を目指すぞ!」これがジンテーゼです。
動物病院であれば、「人とペットの真の共生社会を実現するぞ。そのために診療レベルを上げるんだ!」と理念に燃えて開業した動物病院。その理念がテーゼです。しかし、スタッフがゆるーい働き方を望んでいて、ロクに働きもせず、待遇に文句や不満ばかりだったとします。この残念な現実がアンチテーゼです。そうであれば、理念が肚落ちするように皆で理念を再確認して、スタッフが希望する待遇や職場環境になるには〇〇を達成すればOKですよと道筋を示しつつ、社内イベント等をたくさん企画して楽しく働いていく。そのようなウェルビーイングな状態を目指すことがジンテーゼです。
ちなみに、アンチテーゼだけを注視すると、「▲▲のせいで足を引っ張られている」と悪者の様にみえたりします。しかし、アンチテーゼがあるおかげでジンテーゼへと生成発展できるのですから、アンチテーゼは必要なものであり、必然なのです。アンチテーゼに遭遇したら、「ほぉ、そう来たか。さては、この状況を活用して、どう生成発展できるか、自分は試されているのだな。」と達観し、ジンテーゼ探しにエネルギーを注ぐのが経営の上級者であり、人生の上級者です。
とはいえ、アンチテーゼに遭遇してテンパっているときに、なかなかそのような達観はできないものです。しかし、客観的にみると、「え?こうすればいいじゃん」という最適解は案外カンタンに見出せたりします。いわゆる岡目八目です。(岡目八目とは、囲碁から出た格言の一つです。対局者よりも、傍らで観戦している人の方が8目先まで見通せるという意味。 転じて、目先のことで手いっぱいの人に比べ、第三者の方が冷静で正しい判断を下せる時などに用いられる格言です)
経営者は、ヒト、モノ、カネ、情報、時間、知財のあらゆる分野で、心配事が尽きません。そのようなアンチテーゼに遭遇したら、家族に相談したり、親しい同業者に相談したりするのもよいですが、できれば自分の業界に精通しつつも外の世界のことも熟知している人に相談するのがお勧めです。例えるならば、ムーミンにアドバイスしてくれるスナフキンのような存在ですね。きっと、岡目八目的なアドバイスをくれると思います。
スナフキン同様、株式会社フクノカミも、特定の業種だけでなく外の世界のことも存じ上げています。我々のコンサルティングキャリアは、小売・サービス業(1997年~)、ペットビジネス(1999年~)、動物病院(2002年~)などの複数業種に渡ります。いずれも20年以上の時間を投じていますので、ジンテーゼを導き出すよき触媒ではないかと思います。『より豊かな人生』へ生成発展すること(ウェルビーイング)を望まれる方は、忌憚なくご相談ください。
【まとめ】
・創業原点としての理念はどの経営者にもあるが、心配事は尽きない。
・理念をテーゼとすると、心配事はアンチテーゼ。
・アンチテーゼはジンテーゼに昇華するために必要なもの。
・ジンテーゼに辿り着くには、客観的な第三者の岡目八目的なアドバイスが大切。
・第三者は、その当事者の内側のことも、外の世界のことも知っている賢者が理想。