南海トラフ地震が懸念されていますが、そのとき、ペットはどうなるのでしょうか。そして、ペットビジネス従事者は、どう対応するべきでしょうか。
過去の災害発生時の様子を振り返ってみます。
1995年1月17日の阪神淡路大震災では、67カ所の避難所のうち、8割の56カ所で被災者とともにそのペットも受け入れていたそうです。 そして、48カ所の避難所ではペットは他の被災者とのトラブルもなく共存できていたと報告されているようです。
2011年3月11日の東日本大震災では、津波からの避難をしなければならなかったと思いますが、ペットと一緒に避難することが周知されておらず、ペットを家に置いたまま避難する人が多かったそうです。その結果、飼い主と離れ離れになり、多くのペットが放浪することになったようです。
ちなみに、東日本大震災で被災されたペットビジネスの経営者がいらっしゃいます。幸い命は助かりましたが、原発から25km圏のため、「自主避難」を促されている地域です。その経営者は、家族やスタッフを避難させた後、ブリーディングをしている犬を見捨てることができず、頑としてお店に独りで残りました。多数の犬を受け入れてくれる避難所はなかったのです。そして後日、犬とともに避難できる場所を犬仲間がなんとか確保し、ようやく安全な場所に移ることができました。この経営者が、一体どんな覚悟で犬達と過ごしたことか…。
2011年の震災後に、首都圏では輪番停電等が実施され、震災後も非日常の生活がしばらく続きました。そのタイミングで、首都圏のペットショップや動物病院で、災害時にペットに関してどのように対応するべきかを「サバイバルカード」にとりまとめ、私のクライアントで配布したことがあります。
2024年1月1日の能登半島地震において、石川県獣医師会は、1月8日の時点で動物対策本部を立ち上げました。(飼い主のいる)被災されたペットのために、イヌ・ネコ・ウサギ・小鳥の一時預かりの支援を実施されています。また、石川県健康福祉部薬事衛生課では、避難所併設のトレーラーハウスにて、ペット飼育スペースを設けました。
2024年11月、ある繁盛動物病院の院長は、病院に併設でキャンプ場を設け、東南海トラフ地震に備え、野外生活をペットと一緒に過ごし、学び、体験してもらう場を提供しています。ドッグランやカフェも設け、「うるおいのある豊かな生活」を提供して、ペット共生社会へ貢献するべく取り組んでいます。この院長は、コロナ禍の期間を逆手にとって、MBAを取得されました。動物病院業界の外の世界に視野を広げたことで、さらに一回り素晴らしい経営者になられました。そして、動物病院経営者としての視点だけでなく、抽象度を上げてペットビジネス経営者としての視点も併せ持ち、秀逸な経営をしていらっしゃいます。いろんな点と点が繋がり、線になり、やがてはビジョナリーカンパニーになっていくことでしょう。
社会不安が高まるときは、ペットの癒しが絶対に必要とされます。ペットビジネス従事者の存在価値は、これからも高まっていくのではないでしょうか。
犬猫の飼育頭数の増減に一喜一憂するというよりも、視点の抽象度を上げて、器の大きい経営を(出来る範囲で)していきたいところですね。
視点の抽象度を点検したい方は、一度ご相談ください。
【まとめ】
・社会不安が高まるときは、ペットの癒しが必要になる
・経営者として、視点の抽象度を上げることが肝要
・災害への備えを啓蒙しよう