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獣医師の年収について

勤務獣医師の年収はどれくらいが一般的なのでしょう。いろんな角度から検証してみます。 まずは世間一般的な全業種の正社員の平均年収を性別に比較します。国税庁の民間給与実態統計調査(令和4年)によると、全業種における給与所得者(正社員)の平均(給与&賞与)は、男性が563万円、女性が314万円、男女で458万円でした。これが世間一般です。

次に、職種別に比較します。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和5年)によると、 勤務医の平均年収(残業代、賞与含む)は、医師(人医)で1428万円、歯科医師(人医)で904万円、獣医師で663万円でした。世間一般の年収よりも獣医師の方が高いのですが、人医の医師や歯科医師と比較すると、まだまだ低いという状況です。

経験年数によっては、以下のようになります。
経験年数0年であれば、医師で599万円、歯科医師で287万円、獣医師で378万円。
経験年数1~4年で、医師で764万円、歯科医師で654万円、獣医師で443万円。
経験年数5~9年で、医師で989万円、歯科医師で900万円、獣医師で574万円。
経験年数10~14年で、医師で1260万円、歯科医師で1309万円、獣医師で609万円。
経験年数15年以上で、医師で1632万円、歯科医師で1081万円、獣医師で798万円。

上記の比較における差異にはいろんな要因が考えられますが、人医の医師は基本的に専科診療です。その専門科目をじっくりと深耕しやすいです。もちろん彼らは基本的に保険診療に守られていますが、自費診療で稼ごうと思えば、診療レベルを上げる研鑽をすることで生産性を上げやすいといえます。一方の獣医師は、全科診療です。内科も外科も歯科も、すべて対応するゼネラリストとしての能力が求められます。それをマスターするのに5年10年かかるとして、そこから任意の専科診療を1.5次レベルや2次レベルまで研鑽しようとしたら、さらに5年10年かかります。獣医師人生の中で1つや2つの専科診療を極められれば素晴らしいですが、そうしているうちに年齢を重ね、リタイアのことを考えるようになります。つまり、1.5次レベルの専科診療を確立できなければ、獣医師は客単価が低位安定してしまい、生産性が上がらず、年収も上がらないという構図が根本的に蔓延っていると考えられます。

勤務獣医師としての年収が納得できないのであれば、自分で独立開業しようと考えるのは、その獣医師の自由です。リスクが伴いますが、その方の人生ですから、自己責任です。
ただ、独立開業する場合は、院長業務の大変さや経営の大変さを背負わなければなりません。資金繰り、人の採用・育成・定着など、かなりの時間を奪われます。その状況で、例えば1000万円台の年収を手にする開業獣医師という人生もよいですが、そもそも経営者になりたくて獣医師免許を取得したのでしょうか?むしろ、働きやすい病院に勤めて、頑張って1000万円台の年収を手にする勤務獣医師という人生の方が、臨床のコア業務に専念でき、ワークライフバランスの観点では充実するのではないでしょうか。

例え話として年収1000万円台のケースを挙げましたが、盲点なのが、税金です。日本の税制は累進課税なので、所得税や住民税や社会保険料は、1000万円台を超えてくると、顕著に負担が大きくなります。その点も加味すると、独立開業して手にする1000万円台と、勤務獣医師として手にする1000万円台では、前者の方が多少額が大きくても、手取り金額では大差ありません。しかし、開業獣医師は、勤務時間外や休日でも経営の勉強等をしなければならないのに対し、勤務獣医師は週休2日や有給休暇が保証されています。どちらの方がQOLが高いか、なかなか思案のしどころです。

したがって、経営者としては、勤務獣医師がスムーズに年収を上げられるように道筋を示してあげるのが建設的です。 我々のクライアントでは、勤務獣医師が年収1000万円を稼げるようになるための賃金体系をよく整備します。(「賃金体系」に関してはコチラでも触れていますので、ご参照ください)

過度に生産性を追求することが優先されて理念がおざなりになってしまう経営は、勤務獣医師は望まないと思います。目の前の患者さんに寄り添い、元気になってもらうことで働き甲斐を感じられる職業ですから、患者さんファーストで勤務されているかと思います。 そのうえで、世間の最低賃金の上昇の話や、賃金アップの話を目の当たりにすると、「獣医師のお給料って、もっと高くてもよいのでは?」という疑問が湧いてくるのも人情です。 そのような勤務医の気持ちに寄り添い、納得のいく賃金をお支払いしようと思ったら、どうすればよいのでしょう。

無い袖は振れませんので、その獣医師が病院に貢献してくれた部分を公平に評価して、適切にお支払いすることです。公平な評価には定量評価と定性評価があります。業績などに応じたデジタル的な定量評価と、後輩育成などの貢献に応じたアナログ的な定性評価です。過度にドライな定量評価は慎まなければなりませんが、その獣医師が忙しいのか・暇なのか、根治しようと頑張っているのか・サボっているのかは、外来数や客単価などの数字でデジタル的に判断するのが公平な定量評価です。また、後輩の指導や院長業務のサポート等で貢献してくれるのであれば、その部分はとても助かりますから、アナログ的にはなりますが、公平に定性評価します。それらのデジタル・アナログ双方での公平な評価に基づいて適切な年収を支給するのが、資本主義社会における民間企業の経営者の大切な仕事です。 (「評価・育成」に関してはコチラでも触れていますので、ご参照ください)

獣医師の生産性を今よりも上げるべきかどうかは、個々の獣医師の人生観で決めれば良いと思いますが、業界の平均年収や、その評価の仕方などを分かりやすく説明してあげた方が、年収に対する納得度は高まります。

デリケートかつ難易度の高い経営課題ですので、一度ご相談ください。

【まとめ】
・獣医師の年収は病院への貢献度に応じて決まる。
・貢献度の評価にはデジタル的な定量評価と、アナログ的な定性評価がある。
・定量評価は数字の評価で、その獣医師個人が計上した売上金額などが対象。
・定性評価は数字では表れにくい評価で、部下育成への貢献などが対象。
・獣医師の年収はその獣医師の働き次第であり、無い袖は振れない。
・経営者は勤務獣医師が年収を上げられるように道筋を示してあげるのが建設的。