車を運転していると、最もよく見るのはフロントガラスの先に見える前方です。次に、計器類の数値、そしてバックミラーに映る後方です。後ろばかり見ているドライバーはいません。主に前方をみて、合間に計器類を見ながらスピードは適正か、ガソリンは足りているかなどを確認し、たまに後方に目を配るように運転をするはずです。

会社経営も、車の運転によく似ています。この先、会社がどう進むか。現在の生産性はどうなのか、運転資金は足りるのか。過去の経営数値と比較して今期はどうか、などを確認しながら経営しているはずです。

決算書というのは、税理士が税務署向けに報告をするための資料です。大事なデータが記載されてはいますが、あくまでも過去の情報です。したがって、決算書とはバックミラーに映る後方の景色のような情報です。このような情報を司る会計を税務会計と言います。

一方、安全運転で事業展開をするには、キャッシュフローやキャッシュ残高を適切に維持しつつ、どれくらいの儲けが出るのか、そしてその利回りはナンボなのかが分からなければ、ガス欠やオーバーヒートのような故障をしてしまいます。そうならないように、財務データを確認しつつ適切にマネジメントするのですが、このようなデータを司る会計を財務会計と言います。

さらには、外来数や客単価や稼働率等を把握しつつ、近未来を予測しながら事業の舵をどのように切るか経営判断するわけですが、このようなデータを司る会計を管理会計と言います。

要するに会計には税務会計、財務会計、管理会計が存在します。これらを用いて、この先の中長期での事業のシミュレーションをすると、財務基盤の強みとリスクが浮き彫りになります。それを踏まえ、どのように経営するかを考えることが、財務基盤を強化するということです。

ただ、税理士さんはもちろん、銀行員だって、基本的に管理会計までは担当していませんので、中長期のシミュレーションはしません。当然、財務基盤の本質を経営者目線で把握できないので、融資をする際は、担保や経営者保証を求めるのです。（逆に言うと、中長期のシミュレーションを丁寧に説明し、銀行員に納得してもらえれば、無担保、保証人無しのプロパーで貸してくれるものです）

一般的に、銀行員というのは、利益と言ったら営業利益を気にします。税理士さんは、利益と言ったら税引き前利益を気にします。では、経営者や投資家はどこを気にするべきか？それは、税引き後利益でしょう。

では、優れた投資家は、企業のどこをみるのでしょうか。それは、ROEです。ROEとは、税引き後の純利益を、自己資本で割り算したもの（％）です。投じた資本でナンボ儲かったのか。これをみます。

ROEとは何だか小難しい概念でピンとこないかもしれませんが、例えば、不動産を購入する際、利回りの説明を不動産屋さんがしてくれるものですが、それです。仮に、1000万円の不動産物件で、家賃が5万円／月見込めるのであれば、年間60万円の家賃収入です。これはすなわち、1000万円の投資をして、1年で6％の（表面）利回りということになります。利回りが高ければ、不動産価格は上昇基調で推移しますし、低ければ下降基調で推移します。このような数値をみて、投資家はその物件を買うかどうか判断します。

同じように、ROEをみて、投資家はその事業を値踏みします。

さらには、その事業が先々どのように推移していくかをシミュレーションするのですが、そのためには管理会計が必要になります。

それでは、貴社の事業は、いくらの自己資本を投じて、ナンボの利回りでしょうか？
そして、今後はどのように推移していく計画でしょうか？

動物病院の財務基盤を強化するためには、投資家目線で中長期での事業のシミュレーションをして、強化の施策を練ることです。

施策には、攻めと守りがあります。攻めとは、入ってくるキャッシュを増やすことです。人材育成や、客単価アップのための投資です。一方、守りとは、出ていくキャッシュを減らすことです。無駄な経費を削減して、効率化することです。
余分な浪費は慎むべきですが、守ってばかりではジリ貧（縮小均衡）に陥ります。浪費は慎みつつも、必要な投資はケチらないことです。（始末してきばる）
とくに、税務会計だけで経営を論じると、単なるコストカットばかりに偏りがちで、事業を停滞（場合によっては悪化）させることがあります。車の運転に例えると、バックミラーばかり見ていて、前方不注意で事故を起こすようなものです。
だからこそ、中長期での事業のシミュレーションをして、攻めと守りのバランスよく、財務基盤の強化の施策を練ることが肝要です。

財務基盤を強化したいという方は、一度ご相談ください。

【まとめ】
・会計には税務会計と財務会計と管理会計がある。
・税務会計だけでは経営を語れない。
・この先どうなるかは中長期の事業シミュレーション。
・攻めと守りのバランスを考えて、財務基盤を強化する。