金融機関とのお付き合いは、1行だけでは片手落ちです。メイン、サブ、というように、複数行とお付き合いすることです。その方が、競争原理が働いて、よいお付き合いがしやすくなります。金融機関は横並び意識があるので、複数行とお付き合いがある方が「A行がこのような条件を出すのであれば、うちも稟議を通しやすい」と安心します。そして、いろんな金融機関とバランスよく取引していた方が、貸し渋りや貸し剥がし等への備えになります。
余談ですが、現預金を普通預金で1つの金融機関に預ける場合、残高が1000万円を超えると、万が一金融機関が破綻したら、1000万円までは保護されますが、それ以上はペイオフといって、カットされます。戻ってきません。そうかといって、1000万円を超える残高があっても保護される当座預金は、2024年1月より、新規開設は厳しくなりました。小切手や手形を電子決済に切り替えていく意図だと思います。ペイオフ対策であれば、代わりに決済用普通預金を推奨していますが、利息は一切付きませんから、親切な行員さんであれば、複数の金融機関で普通預金を複数口座持っておくことを勧めてくださります。
したがって、複数の金融機関と取引するべきです。
では、どのような金融機関と取引すればよいのでしょう。中小企業(動物病院)の場合、都市銀行とのお付き合いは基本的に不要です。事業規模が5億円規模になれば、都市銀行を含めてもよいかもしれませんが、それ未満であれば、地方銀行や、信用金庫や、政府系金融機関がフィットします。
また、同じ銀行や信用金庫でも、住宅街にある支店か、ターミナルの繁華街等にある支店かによって、役割が異なります。最近の金融機関は支店の統廃合や効率化を推進しており、例えば住宅街の支店は個人客向けにフォーカスし、融資の相談は受け付けないケースがあります。代わりにターミナルにある支店を紹介されたりしますが、法人口座は、できれば最初からターミナルにある支店で開設したいものです。
それらの選択肢の中から取引する金融機関を絞り込んだら、有利な条件で付き合っていただけるように交渉していくのが経営者の仕事です。
有利な条件とは、「プロパーで経営者保証や担保を付けずにたくさん貸してくれる」ということです。そういう金融機関がメインバンクです。給与振込の口座がある金融機関がメインバンクというわけではありません。
このような有利な条件でお付き合いできない場合は、その企業のことを金融機関が信用していないということです。ちゃんと返済してくれるかどうか分からないと、信用保証協会の保証を付けられたり、経営者保証や担保を要求されたりします。
それでは、主体的に有利な条件を獲得するにはどうすればよいか。それは、まず、決算書の取りまとめ方にこだわることです。税理士さん任せではよろしくありません。税理士さんは、税務署向けに決算書をまとめるのが趣旨で、要するに過去の業績を税務署目線で税務会計するプロです。税収に影響がなければ、仮勘定も躊躇なく使用します。一方、金融機関は、仮勘定が多いと、与信評価が下がります。短期貸付金や社長貸付金などがあると、不良債権とみなされ、融資の申し込みをしても審査が通りません。
そして、金融機関から有利な条件を引き出すには、進行期と、中長期の見通しを適時適切に金融機関に報告しつつ、財務基盤を強化することです。このような未来向けの話は、税理士さんは基本的に担当外です。経営者自身がきちんと取りまとめ、足腰のしっかりした厳しい経営をする覚悟を金融機関に伝えることが肝要です。
(「中長期の経営計画」に関してはコチラでも触れていますので、ご参照ください)
これらのような業務を、臨床でお忙しい院長が行うのはなかなか厳しいです。CFO代行のようなことをしてくれる第三者にサポートしてもらうのが現実的でしょう。
財務戦略について見直してみたいという方は、一度ご相談ください。
【まとめ】
・金融機関は複数とお付き合いする。
・身の丈に合った金融機関、用途に合った支店を選ぶ。
・担保や経営者保証が不要で、プロパーで融資してもらえる状態を目指す。
・決算書の仕上げ方に留意する。
・中長期の事業計画を適時適切に金融機関に説明する。