― 資金調達は「気合」ではなく「戦略」で決まる ―
銀行交渉というと、「苦手」「緊張する」「後回しにしてしまう」
という経営者は少なくありません。
しかし、資金調達は経営の根幹です。
感情論ではなく、構造とタイミングを理解すれば、
銀行交渉は決して難しいものではありません。
1. 銀行にも“都合の良い時期”がある
金融機関の多くは3月決算です。
銀行の仕事はシンプルで、「貸付金を増やし続けること」。
当然、担当者には融資のノルマがあります。
そのため3月に近づくにつれ、
貸付残高を積み上げたい
実績を作りたい
条件を多少緩めても融資を出したい
という空気が強まります。
つまり、3月は融資条件が相対的に優遇されやすいタイミングなのです。
ただし注意点があります。
3月に入ってから相談するのは、正直遅い。
実務的には、
1月〜2月から交渉を始める
これがベストです。
2. 銀行交渉は「自社の立ち位置」を知ることから始まる
銀行交渉で最も重要なのは、
自社が「強者」なのか「弱者」なのかを正しく把握することです。
判断基準はシンプルです。
現預金が潤沢にあるか
資金繰りに余裕があるか
ここを見誤ると、交渉は一気に不利になります。
3. 現預金が潤沢でない場合:弱者の戦略
現預金が十分でない企業は、弱者の戦略を取るべきです。
この局面でやってはいけないのが、
「保証協会なしのプロパーでお願いします」
「金利をもっと下げてください」
「条件をもう少し良くできませんか」
といった、細かな条件交渉です。
銀行側も3月前は非常に忙しい時期です。
そこで面倒な交渉をすると、
「では、他の金融機関をあたってください」
と言われてしまう可能性があります。
それはつまり、
手元資金を積み上げる最大のチャンスを失うということです。
弱者の戦略で最優先すべきは、
条件よりもスピード
金利よりも資金量
体裁よりも安全性
とにかく借りて、現預金を厚くすること
これが、経営者として最も賢明な判断です。
4. 現預金が潤沢な場合:強者の戦略
一方で、現預金が潤沢にある企業は、強者の戦略を取るべきです。
この場合、交渉の順番が重要になります。
いきなり金利交渉から入るのではなく、まずは、
「経営者保証を外せませんか」
「昔から残っている根抵当の枠を小さくできませんか」
といった、経営リスクを軽減する条件を徐々に交渉します。
銀行側から見ても、資金繰りに余裕のある企業は「優良先」です。
そのため、時間をかけて関係性を築けば、条件改善に応じてもらいやすくなります。
5. 金利交渉は“最後のカード”
諸条件が整理され、銀行との関係性も良好になってきた段階で、
強者の戦略の終盤として金利交渉を行います。
この順番を間違えなければ、
無理な要求にならない
銀行との関係を壊さない
長期的に有利な取引ができる
という好循環が生まれます。
6. 銀行交渉とは「自社の未来を守る行為」
銀行交渉は、
「お金を借りるための交渉」ではありません。
不測の事態に耐えられる体力を作る
経営判断の選択肢を増やす
経営者が安心して舵取りできる状態を作る
そのための経営戦略の一部です。
自社の立ち位置を冷静に見極め、
弱者なら弱者の、強者なら強者の戦略を取る。
それが、銀行交渉のイロハです。
【まとめ】
・3月は融資条件が相対的に優遇されやすい
・実務的には、1月〜2月から交渉を始める
・現預金が十分でない企業は、細かな条件交渉は慎む(弱者の戦略)
・現預金が潤沢にある企業は、経営リスクを軽減する条件を徐々に交渉する(強者の戦略)
・銀行交渉とは「自社の未来を守る行為」





