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動物病院の事業承継における評価方法について

事業承継の際に、株式の譲渡価額を決めるには、どうすればよいのでしょう。いろいろな計算方法があり、どれを選択するかで、評価の金額がブレます。願わくば、売手も買手も納得度が高くなるように決めたいところです。

具体的な株式評価価額の計算方法ですが、概ね3つの会計手法が挙げられます。
1)税務会計、2)財務会計、3)管理会計、の3つです。

1)税務会計は、税理士さんがよく用います。税理士さんや金融機関に事業承継の相談をすると、彼らは基本的に税務会計で株式の評価をします。非上場企業の場合は相続税法上の株価評価になることが多いので、どうしてもそれなり(低め)の金額になってしまいます。少しでも良い条件で事業承継したければ、税務会計だけではなく、財務会計や管理会計も併用し、企業のポテンシャルを適正に評価してほしいところです。

ただし、あまりにも決算書の内容が芳しくなかったり、事業規模が小さすぎる場合は、どんなに背伸びしてもマッチングしませんので、自然廃業もやむなしといったところでしょう。(だからこそ、業績アップへの企業努力は永遠の課題です)

2)財務会計で未来へのポテンシャルや価値を計算する手法としては、DCF法(ディスカウントキャッシュフローという計算方法)があります。起こりうる未来を演繹法的に計算するものなので、なかなかブレますが、株式評価価額を税務会計に上積みするうえで用いられます。業界にM&Aの追い風が吹いている売手市場では、その事業を買いたいニーズが高まりますから、高値が罷り通ります。ただし、売り手市場がいつまでも続くとは限りません。買手の納得度を高めるためには、演繹法だけではなく、帰納法的な補足説明が必要でしょう。

※演繹法はルールや法則に基づく物事に当てはめて結果を導き出すものですが、帰納法は複数の事実や事例から共通点を導き出し、一般論となる結論にたどり着くための方法です。 この2つの思考法を状況に応じて使い分けることで、より正確な結論を導き出すことができるでしょう。

3)帰納法的に株式評価価額を計算する手法は、管理会計です。(「管理会計」に関してはコチラでも触れていますので、ご参照ください)
管理会計を株式評価価額の計算に帰納法的に活用しようと思ったら、動物病院の現場に寄り添って、本格的にシェアを使いこなしたマーケティング理論が求められますし、組織オペレーションに精通したマネジメント理論が求められます。この分野は、税理士さんや金融機関はそもそも専門外です。かなり難易度が高い業務です。専門の経営コンサルタントでも、普段から真摯に経営リテラシーを高め続けていなければ、なかなか難しいでしょう。とくに、買手に株式の評価価額を説明する際に、「なるほど」と腑に落ちるロジックになっているかどうか。そこが肝要です。
それによって、事業承継がスムーズに成就するのか長引くのか、高く売れるのか買い叩かれるのか。まさに、運命の分かれ道です。

最近の事業承継は、金融機関も専門部隊を抱えたりしますし、参入するファンドやM&A事業者が増えています。選択肢が増えるので、業界的には良い傾向だと思います。ただし、「うちは着手金が安いよ」とか「成功報酬の手数料が安いよ」とアドバイザリー契約での安さをPRしているところに関しては、慎重に吟味した方がよいと思います。
安いからといって、そこが税務会計だけで株式の評価をしていた場合、どうなるでしょう。恐らく、譲渡する側(売手)が手にする売却金額は小さくなってしまいます。売手は「安物買いの銭失い」になってしまうでしょう。
あるいは、税務会計と財務会計(演繹法)で株式の評価をしていた場合、株式の譲渡価額は逆に高めにブレる可能性があります。それはそれで、売手にとっては望ましいかもしれません。しかし、買手が納得しなければ、なかなか事業承継が成立してくれませんから、スケジュールが長期化してしまいます。
やはり、1)税務会計と2)財務会計(演繹法)と3)管理会計(帰納法)とをバランスよく用いて、売手も買手も納得する金額でスムーズに事業承継を成立させたいところです。

ハッピーリタイアをしたい方は、一度ご相談ください。

【まとめ】
・株式の評価価額を計算するには、
① 過去の決算書に基づいた相続税法による評価(税務会計)
② 未来へのポテンシャルに基づいた演繹法によるに評価(財務会計)
③ 現場で再現性高く用いられているロジックに基づいた帰納法による評価(管理会計)
を併用することが肝要。
・もちろん、決算書の内容が芳しくなかったり、事業規模が小さすぎる場合は、自然廃業もやむなし。
・いずれのケースも、数年前から企業価値を高めておく前工程が大切。
・株式の評価価額の計算根拠によって、早く高くうれるか、遅く安く売れるか決まる。