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動物病院や中小企業のオープンブック経営

あなたの会社では、経営状況をスタッフに説明(公表)していますか?説明する会社は、どんな意図で公表しているのでしょうか?説明しない会社は、何を懸念しているのでしょうか?その点を検証してみます。

まず、大手(上場企業)はIRといって決算書などの財務内容を公表します。投資家に投資の判断をしてもらうためには欠かせませんので、上場企業の責務です。一方、中小企業は公表する義務を負っていません。経営者の任意ですから、公表してもしなくても自由です。では、スタッフに公表する中小企業の経営者は、一体何を意図しているのでしょうか。

例えば、賞与の時期に、その金額が多い・少ないというのを従業員は気にします。「私は患者さんにこれだけ感謝されているし、実績も残しているのに、何で院長は評価してくれないのですか?」など。ご尤もなことを言っているように聞こえますが、賞与は会社全体の業績に応じて任意で支給するものです。会社のことを気にせずに、自分のことばかり主張するスタッフは、単に会社全体のことを知らされていないだけかもしれません。そうであれば、経営陣が適時適切に経営状況をインフォームするべきです。

ちなみに、患者さん向けには、独断で診断をつけてしまうのは誤診の元ですから、健診の後に報告書を用意して、エビデンスに基づいて状況(事実)を丁寧にインフォームすると思います。そして患者さんの同意を得ながら、満足度を高めて治療をすすめていくはずです。

では、同じ熱量で、スタッフに会社の状況を説明していますでしょうか?同業他社と経営数値の比較をしながら、自社がフェアに経営していることを、決算書というエビデンスを交えて従業員に丁寧に説明することで、会社に対する理解と満足度が深まります。そのうえで、会社の事業計画を説明し、協力してもらえるように合意形成するのが、決算内容をスタッフに説明する中小企業経営者の意図です。(その方が生産性が上がります)

決算書などを公表する経営手法を、オープンブック経営といいます。そのメリットは以下の通りです。
・従業員が会社のことを理解しやすくなる。
・業界平均との対比で自社を客観視できる。
・フェアな経営をしていることが理解され、従業員のモティベーションが上がる。
・スタッフが主体的に行動するようになる。
・その先の未来への事業計画が現実味を帯びてくる。
など

逆に、そのデメリットは以下の通りです。
・経営者が搾取している場合は紛糾してしまうリスク。
・従業員の要望がエスカレートしてしまうリスク。
・お粗末な財務内容の場合は従業員が去ってしまうリスク。
など

余談ですが、自然の摂理にはいろいろ学ぶところがあります。例えばキタキツネ。北海道ではエキノコックスを蔓延させる害獣ではありますが、その生態は示唆に富んでいます。長雨が降ると、鋭敏な嗅覚や聴覚が機能せず、捕食する動物に困窮します。それでも、食欲旺盛な子狐は、母狐に「何か頂戴」と食料をねだります。食料に困窮した母狐は、口を大きく開いて、捕食した動物が存在しないエビデンスを示します。そうしないと、子狐は「捕食した食料が存在するのでは?」と勘違いして行動するからです。そうして母狐は、子狐に今は我慢が必要なことを理解させます。それが自然の摂理です。

話を戻します。一般的な中小企業では、従業員には会社の経営状況が分かりません。業績が前年比で上がっているのか下がっているのか、あまり理解されていないことがあります。そのような状況でも、経営者が一定以上の条件で処遇してくれるうちは、トップダウンの経営が罷り通ります。しかし、物価上昇や世間の賃上げを見聞きしたりすると、トップダウンというのは疑心暗鬼になってしまう危険性を伴います。「ひょっとして、うちの経営陣は搾取しているのではないか?」と。
疑心暗鬼を回避するには、母狐が口を大きく開いて実情を示すように、経営者はスタッフに対して会社の経営状況を適時適切にインフォームすることです。適切に経営していることをスタッフに説明し、理解させます。それが自然の摂理です。

フェアな経営をしている自信のある中小企業の場合、オープンブック経営は積極的に採用するべき手法だと思います。決算書の内容だけではなく、向こう5か年の事業計画も経営方針発表会などで説明し、組織を一体化していくのが王道です。

それが浸透すると、スタッフ向けの月次ミーティングなどを開催するに従って、一体化が更に進み、全体の底上げが捗ります。特筆すべきは、オープンブック経営はカリスマ的なリーダーシップが無くても実現可能ということです。

オープンブック経営にチャレンジしてみたい方は、一度ご相談ください。

【まとめ】
・中小企業の経営状態は適時適切に従業員に公表(説明)する方がよい。
・決算書の内容をスタッフにインフォームし、理解させるメリットは大きい。
・カリスマ的なリーダーシップが無くても実現可能。